2008年05月30日

Mahavishnu Orchestra『Inner Worlds』

Narada Michael Walden大活躍の第二期ラスト作☆Mahavishnu Orchestra『Inner Worlds』
Inner Worlds
発表年:1976年
ez的ジャンル:ギターシンセ系フュージョン
気分は... :僕はこの軟弱さが好きだな!

John McLaughlin率いるMahavishnu Orchestraの2回目の登場です。

『Birds of Fire』(1972年)の続き紹介するのは、第2期Mahavishnu Orchestraのラスト・アルバム『Inner Worlds』(1976年)です。

前回紹介した第1期Mahavishnu Orchestra時代の『Birds of Fire』は、インド音楽/思想の影響が強く反映されたジャズ・ロックによりグループの人気を確立した重要作でした。

それに対して、第2期のラスト作品『Inner Worlds』は、コアなMahavishnu Orchestraファンからは評価の低い作品だと思います。ヴォーカル入りのポップな作品も含まれ、その軟弱さが敬遠されたのだと思います。

さらに1975年にMcLaughlinはインド人ミュージシャン達とのアコースティックなグループShaktiを結成しており、Mahavishnu Orchestraへの力の入れ具合が疎かになっていたように映ったのかもしれませんね。実際、本作にはMcLaughlin本人が不参加の楽曲も含まれます。

一方で、本作ならではの新たな試みにも挑戦しています。それはMcLaughlinのギターシンセへの取り組みです。前作『Visions of the emerald beyond』(1975年)を最後にJean-Luc Ponty(vln)、Gayle Moran(key)が去り、新たにStu Goldberg(key)が加入し、John McLaughlinStu GoldbergRalphe Armstrong(b)、Narada Michael Walden(ds)の4人体制になりました。バイオリンのサウンドの大胆な導入がサウンドの特徴の1つでしたが、それを補うためにMcLaughlinが試みたのがギター・シンセです。

僕自身はギター・シンセへの興味はありませんが、フュージョン・ファンの方はこのあたりを楽しむのも1つかと...

僕の場合、前述のコア・ファンが敬遠するポップ&メロウな側面に魅力を感じて本作を購入しました。その鍵を握っているのが本作でMcLaughlin以上に目立っているNarada Michael Waldenの存在です。

R&Bファンの方ならばご存知のとおり、80年代、90年代にAretha FranklinWhitney HoustonMariah Carey等を手掛けたことで一躍人気プロデューサーとなったNaradaですが、そうした大成功に至る前の若き日のNaradaの活躍に興味が湧きましたね。

『Apocalypse』(1974年)、『Visions of the emerald beyond』(1975年)、『Inner Worlds』(1976年)という3枚の第二期作品は古い順に評価が高いと思いますが、それはあくまでもフュージョン・ファンの観点だと思います。

本作は、統一感のないとっ散らかったアルバムであることは事実ですが、そのバリエーションが逆に楽しめるアルバムでもあります。僕のようなR&B好き、メロウ好きが聴くフュージョンとしては案外悪くない作品だと思います。

オススメ曲を紹介しときやす。

「All in the Family」
エキサイティングでカッチョ良いフュージョンらしいグルーヴを堪能できるオープニング。テンションが高い各メンバーの中でも特にNaradaのドラムがカッチョ良すぎですね。僕などは"プロデューサーNarada Michael Walden"の印象が強いので、ドラマーとしてのNaradaの魅力を再確認した1曲です。

「Miles Out」
Mahavishnu Orchestraらしい演奏が堪能できる仕上がり。4人にメンバーを絞り、ギター・シンセを導入したグループの狙いが最も良いかたちで反映されている曲だと思います。

「In My Life」
「River of My Heart」と並ぶ僕のお気に入り曲。昔からのコアなファンからは敬遠されるであろうメロウ・チューンです。NaradaのメロウなヴォーカルがR&B/ポップ・フィールドでの成功を予感させます

「Gita」
これもNaradaのリード・ヴォーカルをとる歌モノです。良くも悪くもNaradaのメロウなヴォーカルとMcLaughlinのギター・シンセのアンバランスさが目立ちます。

「The Way of the Pilgrim」
キャッチーで聴き易いフュージョン・チューン。スポーツ・イベントのテーマ曲にでも流すとピッタリな感じがします。

「River of My Heart」
僕が本作を購入するキッカケとなった曲。本ブログでも何度か紹介しているメロウ・グルーヴ系の有名なコンピ『Quiet Paradide』収録曲です。「In My Life」同様コアなファンからは敬遠されるメロウなヴォーカル入りスロウです。しかもMcLaughlinは不参加で、Naradaのヴォーカル&ピアノ&パーカッションとRalphe Armstrongのアコースティック・ベースのみという異色の1曲です。Mahavishnu Orchestraらしくないところが最大の魅力なのでは(笑)

「Planetary Citizen」
ヴォーカル入りのキャッチーなファンキー・チューン。この曲もフュージョン好きよりもファンク好きの方から支持される曲かもしれませんね。2分強の曲なのでもっと長尺で聴きたいですな。

「Lotus Feet」
叙情モードのインスト。McLaughlinのギター・シンセがオカリナっぽくて、エスニックな味わいもありますね。

「Inner Worlds Pts. 1 & 2」
McLaughlinのギター・シンセが炸裂するコズミックな1曲。フュージョンというよりプログレを聴いている感覚になる曲ですね。

本作を最後にMcLaughlinはMahavishnu Orchestraの活動に区切りをつけます。
posted by ez at 08:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 1970年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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