発表年:1974年
ez的ジャンル:UK的アメリカン・ルーツ・ミュージック
気分は... :よく闘った(‐‐)†
たった今、テニスの全仏オープン決勝「ナダル対フェデラー」が終了。
ナダルが世界王者フェデラーに完勝し、4連覇を成し遂げました。
王者フェデラーがこんな敗れ方をするなんて初めて見ましたし、思わず同情してしまいましたね。改めて、クレーコートにおけるナダルの強さを思い知りました。
ナダルがテニス界の伝説となった試合だったのでは?
さて、今日は"多発性脳脊髄硬化症"と闘ったミュージシャンRonnie Laneが1974年にリリースしたアルバム『Anymore For Anymore』です。
Ronnie Laneは1946年ロンドン生まれ。Small Faces〜Facesのべーシストとして、60年代〜70年代前半のUKロック・シーンを駆け抜けました。1973年にFacesを脱退した後は、自身のグループSlim Chanceを率いて『Anymore For Anymore』(1974年)、『Ronnie Lane's Slim Chance』(1975年)、『One for the Road』(1976年)という3枚のアルバムをリリース。
また、Facesでの盟友Ron Woodとのコラボ『Mahoney's Last Stand』(1976年)、Pete Townshendとのコラボ『Rough Mix』(1977年)といった作品もリリースしています。
しかし、『Rough Mix』のレコーディング後に"多発性脳脊髄硬化症"であることが判明し、ここから闘病生活が始まります。その間も渾身のソロ・アルバム『See Me』(1979年)をリリースし、1983年にはRonniの呼びかけでARMS(Action for Research into Multiple Sclerosis: 多発性脳脊髄硬化症研究機関)基金のためのチャリティ・コンサートを開催しました。長い闘いの末、1997年6月に死去(享年51歳)。
Ronnie Laneの名前は、Small Faces〜Facesのメンバーとして馴染みがありましたが、脇役というイメージでしたね。そんな僕がRonnie Laneの存在感を認識したのは、皮肉にもARMSコンサートでした。
Eric Clapton、Jeff Beck、Jimmy Pageという元Yardbirdsの三大ギタリスト、Steve Winwood、Bill Wyman、Charlie Watts等の豪華メンツがRonnieを慕って集ったことに感動したのと同時に、Ronnieが難病と闘っていることをこの時初めて知りました。
今日紹介する『Anymore For Anymore』は、RonnieがFaces脱退後の第1弾アルバムです。
Ronnie(vo、g、b)以外のメンバーは、Graham Lyle(g、banjo、ml) 、Benny Gallagher(b、g、acc)、Kevin Westlake(g)、Bill Livsey(key)、Steve Bingham(b)、Chris Stewart(b)、Biddy Wright(b)、Bruce Rowland(ds)、Jimmy Jewell(sax)、Ken Slaven(fiddle)、Tanners(vo)といった布陣です。Benny GallagherとGraham LyleはGallagher & Lyleの2人です。
基本的には"イギリス出身ミュージシャンによるアメリカン・ルーツ・ミュージックへのアプローチ"なのですが、絶妙のサジ加減の仕上がりが魅力です。アーシーな枯れ具合がサイコーで、英国トラッドのスパイスも加えつつ、決してイモ臭くならず適度に洗練されている...といったカンジでしょうか。
僕の場合、ルーツ・ミュージックは決して嫌いではありませんが、イモ臭い野暮ったさが出てくるとダメなんですよね。その点、本作はいい枯れ具合の実に小粋な仕上がりになっています。
本作リリース後、Ronnieはサーカス団仕立てのツアーPassing Showを敢行します。経済的には大赤字だったらしいですが、音楽面、精神面では最も充実していた時期だったのでは?
ウイスキーが良く似合う小粋なルーツ・ミュージックを堪能あれ!
オススメ曲を紹介しときやす。
(本アルバムには収録曲が異なるいくつかのヴァージョンがありますが、ここではUKヴァージョンをベースにしました。)
「Careless Love」
トラッド・ナンバーを少しロック的な味付けでアレンジしたホンキートンクな1曲。のんびりムードたっぷりですが、決してイモ臭くなっていないのがミソ。
「Don't You Cry for Me」
僕の一番のお気に入り曲。味わい深く、ロマンティックなラブソング。アーシーなのにとても洗練された仕上がりです。Ronnieの線の細いヴォーカルとボトル・ネック・ギターの絡みグッド!オシャレなサックスで全体がグッと引き締まっていマス。
「The Poacher」
アルバムからのシングル曲。Ronnie自身が最高傑作に挙げた自信作。クラシックとカントリーが融合した名曲ですね。穏やかながらも、何かパワーを感じます。
「Roll on Babe」
フォークシンガーDerrol Adamsのカヴァー。マンドリンが鳴り響く、ノスタルジック・ムードたっぷりの"古き良きアメリカ"の世界なのですが、ロマンティックな味付けがなされたアレンジのセンスが抜群です。
「Tell Everyone」
Faces時代の楽曲のリメイク。オリジナルはFacesの2ndアルバム『Long Player』(1971年)に収録されています。ここでは当然ながら、カントリー/フォーク風の仕上がりです。『Long Player』収録ヴァージョンと比較すると、何故RonnieがFacesを脱退したのか見えてくるのでは?
「Amelia Earhart's Last Flight」
1937年に消息を絶った女性飛行士Amelia Earhartについて歌ったもの(Dave McEnery作品)。元Fairport Convention のIan MatthewsのグループPlainsongのヴァージョンの方が有名かもしれません(アルバム『In Search Of Amelia Earhart』収録)。僕が苦手なタイプの曲ですが、アレンジのセンスの良さでそれほど苦手意識を感じません。
「Anymore for Anymore」
タイトル曲はRonnieのオリジナル。涼しげなフォーク・チューン。Ronnieの頼りないヴォーカルとトラッド・サウンドが良くマッチしています。
「Only a Bird in a Gilded Cage」
アメリカのポピュラー作曲家Harry Von Tilzerが1900年に書いた小品。スタンダード・テイストたっぷりです。
「Chicken Wired」
「Only a Bird in a Gilded Cage」からシームレスに続く、ご機嫌なカントリー・チューン。アルバムの中でも最もテンション高い1曲です。実に楽しげな雰囲気がサイコーですね!
僕が持っている盤は『Anymore For Anymore...Plus』というヤツで、シングル「How Come」とそのB面「Done This One Before」の2曲がボーナス・トラックとして追加されています。特にソロ1stシングルになった「How Come」はサイコーですね。個人的にはRod Stewartが歌うとピッタリな気がするのですが...なんて書くとRonnieファンの方に怒られますね(笑)
本作については、ボーナス・トラックに未発表曲集『Tin & Tambourine』も加えた2枚組のデラックス・エディションが4、5年前にリリースされています。
Ronnie渾身のソロ・アルバム『See Me』(1979年)もぜひコレクションに加えたいですね。
さぁ、これからEuro2008年の2日目は「オーストリア対クロアチア」、「ドイツ対ポーランド」の2試合。ダークホースとなりそうなクロアチアと優勝候補の呼び声が高いドイツの仕上がり具合に注目です。