発表年:2022年
ez的ジャンル:南ロンドン系UK新世代ジャズ
気分は... :唐衣・・・
新作からUK新世代ジャズ、期待のギタリストOscar Jeromeの2ndアルバム『The Spoon』です。
Oscar JeromeはUKノーフォーク出身のギタリスト。
Tom Mischも学んだトリニティ音楽カレッジの卒業です。卒業後は当ブログでも紹介したロンドンの新世代アフロ・ジャズ・ユニットKokorokoに参加したり、Joe Armon-Jonesのレコーディングに参加するなど南ロンドンの新世代ジャズ・シーンで頭角を現すようになります。そして、2020年にはデビュー・アルバム『Breathe Deep』(2020年)をレコーディングしています。
Oscar Jeromeの存在が大きくクローズ・アップされるようになったのは、UK新世代ジャズを中心とした新鋭アーティスト達がBlue Noteのジャズ名曲をカヴァーする企画の第2弾アルバムVarious『Blue Note Re:imagined II』(2022年)への参加でしょうね。
同作でOscar JeromeはラッパーのOscar Worldpeaceと組み、Grant Green「(Why You So) Green With Envy」をカヴァーしました。
Oscar Jerome & Oscar #Worldpeace「(Why You So) Green With Envy」
https://www.youtube.com/watch?v=5Ih-zqMK7Cw
Various『Blue Note Re:imagined II』(2022年)
そんな注目が高まったグッド・タイミングでリリースされたのが2ndアルバムとなる本作『The Spoon』です。
レコーディングの主要メンバーはOscar Jerome(g、vo、key、syn、per、effects)以下、KokorokoのAyo Salawu(ds)、Tom Misch & Yussef Dayes『What Kinda Music』にも参加していたTom Driessler(b)、元GallianoのCrispin "Spry" Robinson(per)という4名。
それ以外に、当ブログでも紹介したオーストラリアのソウル・コレクティヴ30/70のメンバーZiggy Zeitgeist(ds)、Tom Misch & Yussef Dayes、Ill Considered、Blue Lab BeatsなどUK新世代ジャズの注目作品に数多く参加しているKaidi Akinnibi(sax)、Wu-Lu『Loggerhead』(2022年)でもフィーチャリングされていたLea Sen(vo)、Nubya Garcia『Source』(2020年)などにも参加していたSam Jones(ds)、ロンドンを拠点に25年以上数多くのレコーディングに参加しているフルート奏者Gareth Lockrane(fl)、さらにはFern Skinner(vo)、Theo Erskine(sax)、Marla Kether(b)、 Beni Giles(syn bass)といったミュージシャンが参加しています。
プロデュースはOscar Jeromeと Beni Giles。
楽曲はすべてOscar Jeromeによるオリジナルです(共作含む)。
UK新世代ジャズならではのグルーヴを楽しめます。
アシッド・ジャズを感じる演奏がある点も気に入っています。
「Berlin 1」、「Channel Your Anger」、「Use It Well」といった主要レコーディング・メンバー4名による演奏や、アシッド・ジャズの香りのする「Feel Down South」、Lea Senをフィーチャーした「Hall Of Mirrors」、ローファイ感覚の「Sweet Isolation」あたりを聴けば、本作の魅力を感じられるのでは?
UK新世代ジャズ好きの方はぜひチェックを!
全曲紹介しときやす。
「The Dark Slide」
Oscarのギターと30/70のZiggy Zeitgeistのドラムによる短いインプロビゼーションがオープニング。ミステリアス&エクスペリメンタルな雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=TO4EUKO1oj8
「Sweet Isolation」
Kaidi Akinnibiのサックスをフィーチャー。それ以外はすべての演奏をOscarが務めます。ローファイ感覚のベッドルーム新世代ジャズといった雰囲気の仕上がりです。
https://www.youtube.com/watch?v=NeuYGdhlcbA
「Berlin 1」
前述の主要レコーディング・メンバー4名による演奏。南ロンドンの新世代ジャズらしいジャンルの枠に囚われないヴォーカル入りのキャッチーな演奏を楽しめます。少しダークでクールな疾走感が格好良いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=3pB0E0U19bY
「The Spoon」
タイトル曲も主要レコーディング・メンバー4名による演奏。Oscarのギターを満喫できる幻想的な演奏です。Oscarの切ないヴォーカルも印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=386opZVGCvc
「The Soup」
再びZiggy Zeitgeistとのインプロビゼーション。夢想の中でのセッションといったムードです。
https://www.youtube.com/watch?v=X14WgB3Joxc
「Channel Your Anger」
Ayo Salawuの力強いドラムとCrispin "Spry" Robinsonのパーカッションが牽引する、僕好みのパワフルかつリズミックなジャズ・ファンクです。南ロンドンの新世代ジャズならではの秘めたパワーを感じます。元GallianoのCrispin "Spry" Robinsonも参加しているせいかアシッド・ジャズ的な魅力もありますね。
https://www.youtube.com/watch?v=B2hpMexNsaI
「Feel Down South」
Fern Skinnerがヴォーカルで参加。Hip-Hopバンド的なアシッド・ジャズといった雰囲気の演奏がいいですね。アシッド・ジャズと共に青春時代を過ごした僕としては思わずニンマリしてしまいます。
https://www.youtube.com/watch?v=YE9tChS3_9M
「Aya & Bartholomew」
Oscarのギターのみのインタールード的な短い演奏。
https://www.youtube.com/watch?v=x5NI_FrOImg
「Feed The Pigs」
トラックメイカー的なセンスとカオスを感じるダークなアッパー・グルーヴが印象的な演奏です。ジャンルの枠を軽々と飛び越える南ロンドン新世代ミュージシャンらしい1曲に仕上がっているのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=dcXVlypAvKs
「Path To Someone」
三度Ziggy Zeitgeistとのインプロビゼーション。ここではアフロ・ジャズしています。
https://www.youtube.com/watch?v=FfNYpnRRzEM
「Hall Of Mirrors」
Lea Senの女性ヴォーカルをフィーチャー。ヴォーカルのみを聴いていると哀愁メロウ・ソウルですが、Sam Jonesの少しトライバルなドラムが一筋縄ではいかないムードを醸し出します。目立ちませんがGareth Lockraneのフルートもいい味出しています。
https://www.youtube.com/watch?v=QQ09wFYB8a8
「Use It Well」
本編ラストは主要レコーディング・メンバー4名による演奏で締め括ってくれます。アフロ・ジャズのようでアフロ・ジャズともまた少し違う感じがクセになります。
https://www.youtube.com/watch?v=GYWkc1xWh_A
国内盤CDには「Channel Your Anger (Live)」、「Feet Down South (Live)」の2曲がボーナス・トラックとして追加収録されています。
『Breathe Deep』(2020年)