2022年08月21日

Kokoroko『Could We Be More』

UK新世代アフロ・ジャズに新鮮な驚き☆Kokoroko『Could We Be More』

発表年:2022年
ez的ジャンル:UK新世代アフロ・ジャズ・ユニット
気分は... :メロウなアフロ・ジャズ!

新作からUKの新世代アフロ・ジャズ・ユニットKokorokoのデビュー・アルバム『Could We Be More』です。

Kokorokoは、リーダーのSheila Maurice-Greyを中心にロンドンで結成されたアフロ・ジャズ・ユニット。

Kokorokoが注目されるきっかけとなったのは、2018年にGilles PetersonBrownswood Recordingsからリリースされたコンピ・アルバム『We Out Here』でした。

Kokoroko「Abusey Junction」(From 『We Out Here』
https://www.youtube.com/watch?v=tSv04ylc6To

同アルバムにはKokoroko以外にも、Ezra CollectiveMoses BoydMaishaTheon CrossNubya GarciaShabaka HutchingsJoe Armon-JonesTriforceというロンドンの新世代ジャズ・シーンを牽引するアーティストたちのトラックが収録されていました。

その後、「Kokoroko」(2019年)、「Carry Me Home/Baba Ayoola」(2020年)といったEP/シングルのリリースを経て、満を持してリリースされるデビュー・アルバムが本作『Could We Be More』です。

本作におけるメンバーはSheila Maurice-Grey(tp、vo)、Cassie Kinoshi(sax、vo)、Richie Seivwright(tb、vo)、Duane Atherley(b)、Tobi Adenaike(g)、Yohan Kebede(key)、Onome Edgeworth(per)、Ayo Salawu(ds)という8名。

メンバーのうちCassie Kinoshiは、当ブログでも紹介したロンドンのジャズ・アンサンブルSEED Ensembleのリーダーです。リーダーSheila Maurice-GreySEED Ensembleのメンバーです。また、この二人はジャズ・ユニットNerijaのメンバーでもあります。

プロデュースはMiles Clinton James

楽曲はすべてKokorokoのオリジナル。

アフロビートの文脈で紹介されることも多いKokorokoですが、本作を一通り聴いた印象は、アフロ・ジャズのエッセンスを取り入れたメロウ・ジャズ/アイランド・ジャズというものです。僕もアフロビート的エッセンスがもう少し強調されている音をイメージしていたので、正直事前イメージとは異なる音でした。

前述の『We Out Here』収録の「Abusey Junction」を聴けば、その兆候を感じ取ることができますが、アルバム全編でこの路線とは思いませんでした。

アフロ・ジャズでこんなにメロウな気分になれることは新鮮な驚きです。

「Tojo」「Age Of Ascent」「Dide O」「Those Good Times」「Something's Going On」あたりは、フツーにメロウなサマー・ミュージックとして楽しめます。

僕のなかで今年一番サプライズだった1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Tojo」
アフロ・ジャズのエッセンスを取り入れながらも、アイランド・ジャズのようなゆったりと寛いだ雰囲気でバカンス・モードへ誘ってくれるオープニング。これは意表を突かれました。
https://www.youtube.com/watch?v=TK63lmmvJx0

「Blue Robe (Pt.I)」
アフリカン・リズムによるインタールード的な小曲。
https://www.youtube.com/watch?v=sJGqjUjCd70

「Ewa Inu」
コンテンポラリー・ジャズ×アフロ・ジャズな組み合わせがグッド!アフロ・リズムと伸びやかなホーン・サウンドの組み合わせには、他のUK新世代ジャズにはない開放感な心地好さを感じます。さり気ないメロウ・ギターもいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=dDs4x6YtAIU

「Age Of Ascent」
サンセット・モードのロマンティック・アフロ・ジャズとでも称したくなる素敵なバラード。このユニットの素晴らしいホーン・アンサンブルを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=YOqVYvNfw6w

「Dide O」
ヴォーカル入りのアイランド・ジャズ。アフロ・ジャズということを意識せずに楽しめます。聴いていると、都会の喧噪を忘れ、穏やかな気持ちになってきます。ハイライフなギターがいいアクセントになっていますね。
https://www.youtube.com/watch?v=I8kKP9VCRJk

「Soul Searching」
リズミックに疾走しますが、それでもメロウ&ソフトリーな雰囲気なのがこのユニットらしいのかもしれませんね。ジャズ作品らしくないサウンドの余韻も印象的なトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=tF0lL5N6vTs

「We Give Thanks」
ダンサブルなハイライフ・グルーヴ。ハイライフらしい開放的なギターの響きが心地好いです。派手さはありませんがトーキング・ドラムによるアクセントもいいですね。不穏なオルガンだけがアフロビート調なのも面白いです。
https://www.youtube.com/watch?v=YUD9fxr6qTw

「Those Good Times」
AriwaのUKラヴァーズあたりと一緒に聴きたくなるようなヴォーカル入りのメロウ・チューン。メロウなサマー・ソウルとしても楽しめるはずです。
https://www.youtube.com/watch?v=df_UBceDFj8

「Reprise」
ジャズとは別のベクトルを感じるインタールード。
https://www.youtube.com/watch?v=TsAZvd7RBCQ

「War Dance」
UKアフロ・ファンクらしいグルーヴを楽しめる演奏です。スペイシーなアクセントも印象的です。UK新世代アフロ・ジャズ/ファンクがお好きな人であれば間違いのないトラックなのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=gOA4seglB9k

「Interlude」
メロウな小曲。トラックメイカーっぽいのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=0mppA5WtGLA

「Home」
ギター、ベース、コーラスのみの演奏です。メロウ・ギターと優しいコーラスに癒されます。まさにアット・ホームな温もりがあります。
https://www.youtube.com/watch?v=xrpyIPNhPgo

「Something's Going On」
メロウ・ソウル×サマー・フュージョン×アフロ・ジャズの絶妙なクロスオーヴァーで楽しませてくれます。フリーソウル的な魅力もあるトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=KXUv2rYo1eY

「Outro」
ヴォーカル&ハンドクラップによる「Something's Going On」のアウトロ。ラブ&ピースな雰囲気です。
https://www.youtube.com/watch?v=B-BRWfvNHAE

「Blue Robe (Pt.II)」
ラストはアフリカン・リズムで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=P9lf40u9U_0

ご興味がある方は、SEED EnsembleNerija

SEED Ensemble『Driftglass』(2019年)


Nerija『Blume』(2019年)
posted by ez at 00:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月14日

DOMi & JD Beck『Not Tight』

Z世代新星デュオのデビュー・アルバム☆DOMi & JD Beck『Not Tight』

発表年:2022年
ez的ジャンル:Z世代新星デュオ
気分は... :おそるべしZ世代!

新作アルバムからKAWAII×超絶テクのZ世代男女デュオDOMi & JD Beckのデビュー・アルバム『Not Tight』です。

DOMi & JD Beckは、フランス出身の女性キーボード奏者Domitille DegalleとUSテキサス州ダラス出身のドラマーJD Beckによる男女デュオ。2018年に結成されました。Domitille Degalleはポップなビジュアルが印象的ですが、こう見えて名門バークリー音楽大学で学んでいます。

二人はソーシャルメディアを主戦場として活動するなかで注目されるようになります。

そんな彼らの名を一躍有名にしたのは、当ブログでも紹介したBruno MarsAnderson .Paakによるスーパー・プロジェクトSilk Sonicのヒット・シングル「Skate」でしょう。作者のなかに二人の名がクレジットされています。

そんなZ世代新星デュオのデビュー・アルバムが本作『Not Tight』です。

Anderson .Paakが設立した新レーベルApeshitと名門Blue Noteからのリリースです。

プロデュースはDOMi & JD Beck自身。

アルバムにはAnderson .Paakをはじめ、ThundercatHerbie HancockSnoop DoggBusta RhymesMac DeMarcoKurt Rosenwinkelといったビッグネームがゲスト参加しています。

このゲスト陣の名を眺めただけでも、いかにDOMi & JD Beckが期待されているかがわかりますね。

アルバム全体を聴いた印象としては、『Drunk』(2017年)、『It Is What It Is』(2020年)といった超絶ベーシストThundercatのメロウ路線の近作からの影響が大きいように感じました。

聴く前は同じ男女デュオということで、Louis Coleと女性シンガーGenevieve ArtadiによるL.A.ポップ・ユニットKNOWERのイメージに近いのかなぁ・・・なんて勝手にイメージしていましたが、ポップ・ユニットというよりはジャズ・ユニットと呼ぶほうが相応しいと思います。

ビジュアルに惑わされてはいけない、おそるべしZ世代新星デュオです。

全曲紹介しときやす。

「Louna's Intro」
ストリングス、ハープ、フルートも入った美しいイントロ。
https://www.youtube.com/watch?v=nU55ar-O2V0

「Whatup」
Z世代ドラマーらしいJD Beckのドラミングを楽しめます。DOMiのキーボード&シンセ・ベースも含めてThundercatに通じるこの音世界を楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=vibu64hLumI

「Smile」
ローファイ新世代ジャズとでも呼びたくメロウなインスト。二人で初めて作ったトラックなのだとか。ドラムとキーボード&シンセ・ベースだけで満足感のあるサウンドをクリエイトできるのが素晴らしいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=SmRppchB8vs

「Bowling」
Thundercat参加曲その1。DOMiとThundercatがヴォーカルをとります。これまで述べたとおり、彼ら自身がThundercatの近作に通じるサウンドなので、そこへ本家がベースで加わるとハマりすぎです。Thundercatのアルバムの1曲と嘘をついても、みんな信じてしまうのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=_oABY8oc7tc

「Not Tight」
Thundercat参加曲その2。タイトル曲はThundercatのベースとそれに呼応するDOMiのキーボードのやりとりが面白いですね。メロウなアウトロもいい感じです。
https://www.youtube.com/watch?v=IBAJCUcxQlE

「Two Shrimps」
カナダ人シンガー・ソングライターMac DeMarcoとの共演。JD Beckのドラムンベース的なドラミングと、メロウな上ものの組み合わせが僕好み。Mac DeMarcoのリード・ヴォーカルとDOMiのバック・コーラスの組み合わせもいいバランスです。
https://www.youtube.com/watch?v=7LKuBAi_gf4

「U Don't Have to Rob Me」
DOMiとJD Beckの二人がヴォーカルをとるローファイ・ポップ。このユニットのポップでKAWAII魅力を楽しめます。どこか儚い感じもZ世代らしいのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=G3nhULRaKNg

「Moon」
Herbie Hancockとの共演。ピアノとヴォコーダーで盛り上げてくれます。80年代Herbie HancockがZ世代サウンドと出会った感じでしょうか。DOMi & JD Beckのジャズ・ミュージシャンの側面がよく浮かび上がってくるトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=78A7seC9odE

「Duke」
このユニットらしい美しくも儚いサウンドに惹かれます。DOMiのキーボードの不安げな音色と響きが絶妙です。
https://www.youtube.com/watch?v=ajis9XmJlAU

「Take a Chance」
Anderson .Paak参加。基本はThundercat的なメロウ・チューンですが、Anderson .Paakのクセのある声質のラップとのコントラストが面白いです。
https://www.youtube.com/watch?v=jJVe_6N8cLY

「Space Mountain」
Thundercatの初期作品を思い出すビートミュージック的なインストに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=hnhvoYeT48Q

「Pilot」
Anderson .Paak、Snoop Dogg、Busta Rhymes参加。まぁまぁクセのある声のゲスト3名ですが、DOMi & JD Beckの音世界に合わせて、抑えたトーンのラップを聴かせてくれます。これが大正解!三者三様の声質がいいアクセントになっています。
https://www.youtube.com/watch?v=rPC1g9oe2_8

「Whoa」
現代ジャズ・ギターの皇帝Kurt Rosenwinkel参加。トリオ演奏による新世代ジャズとして楽しめる演奏です。特にJD BeckとKurt Rosenwinkelのエキサイティングな絡みがいいですね。本作が名門Blue Noteからリリースされた理由がよくわかるトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=6_vvZcUrByA

「Sniff」
JD Beckによる人力ドラムンベースなドラミングによる疾走感が気持ちいい1曲。クラブミュージック好きの人も楽しめるでは?
https://www.youtube.com/watch?v=T_GVKklw_ZU

「Thank U」
イントロと同じくストリングス、ハープ、フルート等による美しい余韻でアルバムは幕を閉じます。
https://www.youtube.com/watch?v=vnnUcyWMk4I

ユニットの成り立ちや注目される流れも含めてZ世代らしいアーティストですね。
posted by ez at 00:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年08月07日

Theo Croker『Love Quantum』

新世代ジャズ・トランペッターの最新作☆Theo Croker『Love Quantum』

発表年:2022年
ez的ジャンル:新世代ジャズ・トランペッター
気分は... :レッテル貼りに意味はない!

新作ジャズからTheo Croker『Love Quantum』です。

Theo Crokerは1985年生まれのUSジャズ・トランペッター。
祖父はグラミー受賞歴を持つジャズ・トランペッターDoc Cheatham(1905-97年)。

音楽大学を卒業後、演奏機会を求めて中国へ移住、2013年に帰国後はN.Y.を拠点に新世代ジャズを代表するミュージシャンとして活躍しています。

自主リリースした『The Fundamentals』(2007年)を皮切りに、『In the Tradition』(2009年)、『Afro Physicist』(2014年)、『Escape Velocity』(2016年)、『Star People Nation』(2019年)、『Blk2life || a Future Past』(2021年)といったアルバムをリリースしています。

僕がTheo Crokerの存在が気になり出したのは『Escape Velocity』(2016年)からですね。そして、前作『Blk2life || a Future Past』(2021年)でジャンルの枠を大きく飛び越えた印象を受けました。

『Blk2life || a Future Past』(2021年)


RGE『Black Radio』(2012年)以降、ジャズ・ミュージシャンによるジャンルの枠を大きく飛び越えた作品というのは、さほど新しい印象を受けないかもしれません。それでもTheo Crokerの近作には、ジャズ・ミュージシャンとしての美学と他ジャンルとの融合をうまくバランスさせているブラック・ミュージックとしての魅力があります。

本作『Love Quantum』は、『Blk2life || a Future Past』の続編といった印象を受ける1枚です。

本作を象徴するトラック「Jazz Is Dead」では、♪ジャズは死んだ♪と繰り返され、ジャンルで音楽にレッテルを貼ることの無意味さが説かれます。その意味で本作のサウンドを「ジャズ」と呼ぶのはアーティストの本意ではないと思います。そう言いつつ、説明するためには「ジャズ」という言葉を用いざるを得ないのですが・・・

前作『Blk2life || a Future Past』と同じく青山トキオ氏がジャケ・デザインを手掛けています。

Theo Croker(tp、flh、vo、syn、prog)、Michael King(key)、Eric Wheeler(b)、Kassa Overall (vo)、Anthony Ware(sax)というTheo Croker作品の定番メンバーを中心に多彩なミュージシャンが参加しています。

さらにGary BartzKassa Overall Jill ScottJames TillmanChris DaveJamila WoodsEgo Ella MayTeedra MosesWyclef Jeanといったジャンルの枠を飛び越えた豪華ゲストが参加しています。

ゲスト陣の殆どは当ブログで作品を取り上げたアーティストであり、そんなことも僕が本作に惹かれた大きな要因です。

プロデュースはTheo Croker自身。
D'Leau(Brook D'Leau)との共同プロデュース3曲、Chris Daveとの共同プロデュース1曲を含みます。

要所で本作に貢献しているD'Leau(Brook D'Leau)は、Jack DaveyとのデュオJ*Daveyとしての活動でも知られるキーボード奏者/プロデューサー。当ブログで紹介した作品でいえば、Sa-Ra Creative Partners『Nuclear Evolution: The Age Of Love』(2009年)、Thundercat『The Golden Age of Apocalypse』(2011年)、Raphael Saadiq『Jimmy Lee』(2019年)を手掛けています。

Gary Bartz & Kassa Overall をフィーチャーした本作を象徴するトラック「Jazz Is Dead」Jill Scottをフィーチャーし、ブラック・パワーを強く感じる「To Be We」、大好きな女性R&BシンガーTeedra Mosesをフィーチャーした「Love Thyself」、サウス・ロンドンの新星Ego Ella Mayをフィーチャーした「Somethin'」、キャッチー&ドリーミーなダンサブル・チューン「She's Bad」、次世代ネオソウルに通じるドリーミー・メロウ「Divinity」、広大な宇宙を感じるタイトル・トラック「Love Quantum (Soliloquy)」など魅惑のトラックで楽しませてくれます。

ジャズ・ファン以外も楽しめる1枚です。
新世代ジャズの入り口として聴くアルバムとしてもオススメです。

全曲紹介しときやす。

「Love Quantum (Prelude)」
トランペットとピアノ、それに自然の音を取り込んだアルバムのプレリュード。

「Jazz Is Dead」
Gary Bartz & Kassa Overall をフィーチャー。本作を象徴するトラック。ジャンルで音楽にレッテルを貼ることの無意味さを訴えます。アフリカン・アメリカンとしてのアイデンティティを打ち出す作品を生み出してきたGary Bartzを(サックスではなく)ヴォーカル。ゲストに迎え、 Kassa Overall がここではラッパーとして活躍します。Miles Davisのクールネスを継承する新世代ジャズといった雰囲気がサイコーです。
https://www.youtube.com/watch?v=E-2yje6S8vg

「To Be We」
Jill Scottをフィーチャー。Jill Scottが雰囲気のあるポエトリー・リーディング&ヴォーカルを聴かせてくれます。ジャズでもR&Bでもないブラック・パワーを強く感じるトラックです。
https://www.youtube.com/watch?v=c-dB0D6l1ck

「Royal Conversation」
当ブログでもデビュー・アルバム『Silk Noise Reflex』(2016年)を取り上げた黒人SSW、James Tillmanをフィーチャー。楽曲はTheo CrokerとJames Tillmanの共作ですが、SSWらしい雰囲気と新世代ジャズらしさを兼ね備えた幻想的ムードが印象的です。

「Cosmic Intercourse (Pt. II)」
Chris Daveをフィーチャー。タイトルからしてChris Dave And The Drumhedz『Chris Dave And The Drumhedz』(2018年)収録「Cosmic Intercourse」の続編という位置づけでしょうか。Theo Crokerのフリューゲル・ホーン、ムーグベース、Chris Daveのドラム、パーカッションという二人だけの演奏を楽しめます。強くアフリカを感じるブラック・ミュージックとしての新世代ジャズを楽しめます。
https://www.youtube.com/watch?v=r-9YoaHuSmg

「Humanity」
Theo Croker、Michael King、Eric Wheeler、Kassa Overall というお馴染みのメンバーと、オーセンティックで穏やかな演奏を聴かせてくれます。

「Divinity」
シカゴを拠点とする女性黒人シンガーJamila Woodsをフィーチャー。次世代ネオソウルに通じるドリーミー・メロウ・チューンに仕上がっています。

「Love Thyself」
大好きな女性R&BシンガーTeedra Mosesをフィーチャー。Theo Crokerの新世代ジャズ・ワールドにTeedra Mosesをうまく巻き込んでいる感じがいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=tRTvJTcvIlw

「Love Quantum (Soliloquy)」
タイトル・トラックは広大な宇宙と哲学を感じます。Theo Croker自身がスポークンワードを披露してくれます。夏の夜空を眺めながら物思いに耽りたいですね。

「Somethin'」
サウス・ロンドンから登場したネオソウルの新星Ego Ella Mayをフィーチャー。彼女は前作『Blk2life || a Future Past』に続く参加です。また、Theoは彼女のアルバム『Honey For Wounds』(2020年)に参加しています。Ego Ella Mayのコケティッシュな歌声とメロウなジャジー・サウンドの組み合わせもなかなかいいですよ。
https://www.youtube.com/watch?v=5Ml8RBILlxk

「She's Bad」
Wyclef Jean(元Fugees)をフィーチャー。前作『Blk2life || a Future Past』に続く参加です。本編ラストはHip-Hop調のキャッチー&ドリーミーなダンサブル・チューンに仕上がっています。このトラックはD'Leauの貢献が大きいと思います。

国内盤には以下のボーナス・トラックが追加収録されています。

「Imperishable Star(Vocal Ver.)」
Alita Mosesをフィーチャー。『Blk2life || a Future Past』収録曲のヴォーカル・ヴァージョンです。Alita Mosesの透明感のあるヴォーカルを生かしたドリーミーな仕上がりです。

「Sun Ra」
偉大なミュージシャンSun Raの名を冠したトラック。Sun Raワールドにつながる広大なコズミック・ジャズで楽しませてくれます。

Theo Crokerの他作品もチェックを!

『In the Tradition』(2009年)


『Afro Physicist』(2014年)


『Escape Velocity』(2016年)


『Star People Nation』(2019年)


『Blk2life || a Future Past』(2021年)
posted by ez at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月31日

Wu-Lu『Loggerhead』

サウス・ロンドンのエナジーが詰まった1枚☆Wu-Lu『Loggerhead』

発表年:2022年
ez的ジャンル:UKブラック・オルタナティヴ・ロック
気分は... :ダーク・エナジー・・・

新作からUKブラック・オルタナティヴ・ロック作品、Wu-Lu『Loggerhead』です。

Wu-Lu(本名:Miles Romans Hopcraft)はサウス・ロンドンを拠点に活動するヴォーカリスト/マルチ・インストゥルメンタリスト/プロデューサー。

彼の父親はアフロビート/ダブ・バンドSoothsayersのメンバーであり、90年代からUK音楽シーンで活躍するトランペット奏者Robin Hopcraft
また、兄のBen Romans-Hopcraftもこれまで2枚のアルバムをリリースしているグループChildhoodのメンバーとして活動しています。

EP「GINGA」(2015年)でデビューし、その後もシングル・リリースでその評価を高めていました。「GINGA」には、Stones Throw所属のL.A.を拠点とするプロデューサー/ビートメイカー/シンガー・ソングライターMndsgnも参加しています。

また、プロデューサーとして、サウス・ロンドンから登場したネオソウルの新星のデビュー・アルバムEgo Ella May『So Far』(2019年)、UKジャマイカン女性シンガーの4thアルバムZara McFarlane『Songs Of An Unknown Tongue』(2020年)といった当ブログでも紹介した作品を手掛けています。

そんな期待のアーティストが満を持してリリースする1stアルバムが本作『Loggerhead』です。

アルバムにはAshaAmonLex AmorLea Senのヴォーカル/ラップがフィーチャリングされています。

彼の友人であるUKのエクスペリメンタル・ロック・バンドBlack MidiのメンバーやEgo Ella May、兄Ben Romans-Hopcraft等も参加しています。

アルバム全体はダークなブラック・オルタナティヴ・ロック×Hip-Hopという印象です。クラブミュージックやレゲエ/ダブのエッセンスも取り入れたトラックもあり、こうしたサウンド感覚が新世代UKブラック・オルタナティヴ・ロックなのかもしれませんね。

ジャンルをあまり気にせず、サウス・ロンドンのダーク・エナジーを楽しむ1枚だと思います。

全曲紹介しときやす。

「Take Stage」
ロンドンのジャズ・カルテットSpeakers Corner QuartetのメンバーRaven Bushのストリングスが印象的なオープニング。ちなみにSpeakers Corner QuartetにはWu-Luの盟友Kwake Bassも参加しています。また、Demae Wodu、Ego Ella Mayがバック・コーラスで参加しています。哀愁モードのプロローグといった雰囲気です。美しいダウナー感が今のUKらしいのでは?

「Night Pill」
ロンドンのロック・デュオSorryのメンバーAshaをフィーチャー。生演奏によるロック×Hip-Hopなサウンドをバックに、AshaとWu-Luがラップ調ヴォーカルを乗せていきます。午前3時に集まってスケートボードを楽しむ様子を表現したのだとか。どこまでもダークトーンなのがいいですね。

「Facts」
Amonをフィーチャー。Black MidiのギタリストMatt Kelvin参加。ジャングルの影響を感じるパルス感のあるリズムと超低温ヴォーカルの組み合わせが印象的です。終盤のノイジーなギターが雰囲気を盛り上げてくれます。

「Scrambled Tricks」
引き続きBlack MidiのギタリストMatt Kelvin参加。ベースの効いたヘヴィなロック・サウンドとラップ調ヴォーカルが醸し出す不気味なダーク・ワールドが魅力です。
https://www.youtube.com/watch?v=6YaQd2IKWmg

「South」
Lex Amorをフィーチャー。2021年に先行してシングル・リリースされていました。♪サウス・ロンドンはすっかり変わってしまった♪と地元を嘆くトラック。フォーキー、ロック、Hip-Hop、レゲエ/ラガが渾然一体となったカオス的面白さを満喫できます。
https://www.youtube.com/watch?v=ibE56gf0G4w

「Calo Paste」
Lea Senをフィーチャー。Raven Bush、Mica Leviがストリングスで参加しています。美しくも切ない悲哀に満ちた1曲に仕上がっています。

「Slightly」
Ego Ella Mayがバック・コーラスで参加。R&B×ポストパンクな雰囲気が面白い1曲に仕上がっています。

「Blame」
Black MidiのギタリストMatt Kelvin参加。新世代オルタナティヴ・ラップ・ロックとでも呼びたくなるトラックですが、クラブミュージック的なエッセンスも感じるところが新世代なのでしょうね。

「Ten」
Black MidiのギタリストMatt Kelvin参加。このトラックはダブのエッセンスを強調しています。このあたりは父Robin Hopcraftの影響なのかもしれませんね。

「Blame/Ten」
https://www.youtube.com/watch?v=G-i5i4mJKcI

「Road Trip」
静かにスタートしますが、一気に加速しドライヴ感のある展開に・・・。シンプルな編成ながらも迫力のあるサウンドにグッときます。スクラッチ風のエフェクトも効果的です。

「Times」
Black MidiのドラマーMorgan Simpson参加。2021年に先行してシングル・リリースされていたトラック。ロックとしてのキャッチーな格好良さとしてはコレが一番かも?
https://www.youtube.com/watch?v=BgAAQupQTW4

「Broken Homes」
兄Ben Romans-Hopcraftがアレンジで参加。タイトルの通り、家庭崩壊の恐怖を淡々と歌うダーク・トラック。冷めた口調のヴォーカルには達観したパワーが宿っているようにさえ感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=UX5-ctxWzGg

「Enemies」
国内盤ボーナス・トラック。オルタナティヴ・ロック×ダブの組み合わせが魅力のトラック。個人的にはダブのエッセンスを強調したサウンドは好きなので嬉しいボートラ。

今週末はNHK BSで深夜に「岩合光昭の世界ネコ歩き」の一挙放送!
TV番組のなかで一番心が安らぎます。
posted by ez at 00:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年07月24日

J. Lamotta Suzume『So I've heard』

全編ヘブライ語の最新作☆J. Lamotta Suzume『So I've heard』

発表年:2022年
ez的ジャンル:イスラエル産次世代ネオソウル
気分は... :ドライブ・マイ・カー・・・

昨日はTV(WOWOW)で映画「ドライブ・マイ・カー」を観ました。
今年のアカデミー賞で「国際長編映画賞」を受賞した話題作ですね。

ほぼ3時間という長い作品ですが、昼と夜の2回観たので計6時間も見入っていました。というよりも1回目は気を抜いて観たせいか、自分の中で消化しきれない部分があったので、2回目は鰻丼食べながら気合い入れて観ました(笑)

観る者の理解力・教養・創造力が試される作品かもしれませんね。観るたびに発見がありそうなので、あと2、3回はリピートしたいです。

さて。新作からイスラエル出身の女性アーティストJ. Lamotta Suzumeの最新作『So I've heard』です。

イスラエル、テルアビブでモロッコ系の両親の元に生まれ、ベルリンを拠点に活動するビートメイカー、シンガー/ラッパーJ. Lamotta Suzumeに関して、これまで当ブログで紹介したのは以下の3枚。

 『Concious Tree』(2017年)
 『Suzume』(2019年)
 『Brand New Choice』(2020年)

これまでドイツ、ベルリンを拠点に活動してきた彼女ですが、本作は故郷のテルアビブでレコーディングし、全編ヘブライ語で歌われています。やはり新型コロナの影響が大きかったようです。

プロデュース&ソングライティングはJ. Lamotta Suzume自身ですが、共同プロデュース&共作曲も多く含まれます。

テルアビブ・レコーディング、ヘブライ語になっても、J. Lamotta Suzumeらしいビートメイカー感覚のキュートで儚い次世代ネオソウルに変りはありません。

その意味では従来からのファンであれば問題なく楽しめると思います。

ヘブライ語歌詞も語感や言い回し等で特に気になりませんでした。

いつものSuzumeを楽しみたいのであれば、「Twist」「Haderech (The Way)」「Linshom Et Ze (Breathe It)」「Haideal (The Ideal)」がオススメです。

本作らしい音を楽しみたいのであれば、エキゾチックなオープニング「Perot (Fruits)」、四つ打ちビートを織り交ぜた「Ota Yabeshet (Same Continent)」、UKっぽいビートの「Einaym (Eyes)」、Solange「Binz」を引用している「Laasot Tov (Do Good)」あたりをどうぞ!

日本独自CD化です。

全曲紹介しときやす。

「Perot (Fruits)」
少しエキゾチックなアクセントが印象的なオープニング。両親がモロッコ系という彼女のルーツを感じるダンサブル・サウンドで楽しませてくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=9ZYyk18qWYM

「Twist」
Michael Moshonovのラップをフィーチャー。ヘブライ語という点を除けば、哀愁メロウR&Bとして楽しめると思います。ドリーミーだけど少しレイジーな雰囲気もあっていいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=SneIm4gL7Pk

「Haderech (The Way)」
オリジナル・ビートは彼女ではありませんが、ビートメイカーでもあるSuzumeによく馴染む哀愁メロウです。

「Linshom Et Ze (Breathe It)」
美しくも儚いムードにグッとくる次世代ネオソウル。ローファイ感覚なのが今時なのかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=EhC4_6zUgCU

「Ota Yabeshet (Same Continent)」
途中で90年代ハウスを思わせる四つ打ちビートを織り交ぜたダンサブル・トラック。90年代ハウス好きとしては大歓迎です。

「Haideal (The Ideal)」
ある意味とても彼女らしい次世代ネオソウル。メロウだけど適度にビートが効いているのがいいですね。途中までヘブライ語で歌われているが全く気にならないのに、終盤少しだけエキゾチックな雰囲気になった途端にヘブライ語の語感が浮き出てくるのが面白いですね。

「Einaym (Eyes)」
Avri Gのラップをフィーチャー。少しアブストラクトでUKっぽいビートが印象的です。終盤には♪目を閉じて♪耳を澄ます♪という日本語歌詞も飛び出します。
https://www.youtube.com/watch?v=MN3DI7UIGqs

「Laasot Tov (Do Good)」
Solange「Binz」を引用していると思われるメロウR&B。Solange「Binz」好きの人であれば気に入るはず!
https://www.youtube.com/watch?v=gHSNBTu_yPI

Solange「Binz」
 https://www.youtube.com/watch?v=83LeK-t-kTw

「2020」
コロナ禍の2020年を嘆く小曲。

「Kenna (Honest)」
ビートメイカー的センスに溢れたメロウ・グルーヴ。軽やかなのにメランコリックなのがいいですね。

「247」
哀愁R&Bですが、何処となく80年代を感じるサウンドが僕好み。

「Ma Ze (What's That)」
ラストはラップ調ヴォーカルを織り交ぜたHip-Hop調トラックで締め括ってくれます。

未聴の方は彼女の他作品もチェックを!これらはすべて英語歌詞です。

『Concious Tree』(2017年)
コンシャス・トゥリー

『Suzume』(2019年)
すずめ

『Brand New Choice』(2020年)
posted by ez at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 2020年代 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする