2023年05月24日

Submotion Orchestra『Fragments』

よりダンサブルになった2nd☆Submotion Orchestra『Fragments』
フラグメンツ
発表年:2012年
ez的ジャンル:ベースミュージック×クラブジャズ
気分は... :美しき残響・・・

今回は人力ダブステップ・バンドとして注目を浴びてきたUKのソウル・コレクティブSubmotion Orchestraの2ndアルバム『Fragments』(2012年)です。

Ruby Wood(vo)、Simon Beddoe(tp、flh、horn arr)、Taz Modi(p、el-p、syn、vibe)、Chris Hargreaves(b、syn b)、Danny Templeman(per)、Tommy Evans(ds)、Dom Howard(producer、engineer)という7組、Submotion Orchestraに関して、これまで当ブログで紹介してきたのは以下の4枚。

 『Finest Hour』(2011年)
 『Alium』(2014年)
 『Colour Theory』(2016年)
 『Kites』(2018年)

各方面で絶賛されたデビュー・アルバム『Finest Hour』(2011年)を経てリリースされた2ndアルバム『Fragments』(2012年)。

ベースミュージックを土台にクラブジャズ等のエッセンスが加わった生演奏という点は前作と同じですが、よりダンサブルでキャッチーなトラックが増えたのが本作の特徴ではないかと思います。その意味では彼らのアルバムの中でも最も聴きやすい1枚かもしれません。

ただし、ダンサブルでキャッチーといっても、その根底には地を這うベースミュージックがあり、同時にこのユニットならではの美しさも兼ね備えているのがSubmotion Orchestraだと思います。

このユニットの美学に毎回ヤラれてしまいます!

全曲紹介しときやす。

「Intro」
Simon Beddoe/Tommy Evans作。美しいピアノとハンドクラップ調のリズムが印象的なアルバムのイントロ。
https://www.youtube.com/watch?v=erDu3t_cTEg

「Blind Spot」
Ruby Wood/Tommy Evans作。シングル曲にもなりました。このユニットらしいビューティフルなベースミュージックを満喫できます。美しき音の残響がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=gbwEA3q7NtE

「Thinking」
Kieren Gallagher/Ruby Wood/Taz Modi/Tommy Evans作。僕好みのトラック。ダンサブルとダビーが同居した本作らしいキャッチーな仕上がりです。パーカッシヴなテイストもいいですね。Tommy Evansも参加するGentleman's Dub ClubのKieren Gallagherがソングライティングに名を連ねます。
https://www.youtube.com/watch?v=PctpvK9XZVc

「Snow」
Tommy Evans作。このユニットならではのジャジー&ダビーな雰囲気を味わえるビューティフル・トラック。Ruby Woodのヴォーカルもサウンドとよくマッチしています。
https://www.youtube.com/watch?v=ctPvSyd2Qzw

「Sleepwalker」
Taz Modi作。まさに夢の中を彷徨うようかのような幻想的な疾走感が魅力のトラック。女性ヴォーカルをフィーチャーしたクラブジャズともフィットするのでは?
https://www.youtube.com/watch?v=jiVU8K1i0t8

「Bird Of Prey」
Danny Templeman/Simon Beddoe/Taz Modi作。クラブジャズ×ベースミュージックなダンサブル・チューン。ダイナミックなサウンドが印象的です。
https://www.youtube.com/watch?v=z7sjhlZwJoE

「Times Strange」
グライム/Hip-Hop MCのRider Shafiqueをフィーチャーしたダンサブル・チューン。Rider Shafiqueのラップが加わることでケミストリーが起きて、このユニットの可能性を広げています。Dom Howard/Rider Shafique/Taz Modi作。
https://www.youtube.com/watch?v=LzDG_xmYJ5A

「Eyeline」
Taz Modi/Tommy Evans作。シングルにもなりました。Ruby Woodの愁いを帯びたヴォーカルが印象的な哀愁チューンですが、中盤から秘めたる情熱の如くサウンドのパワフルさが増します。
https://www.youtube.com/watch?v=T-DMuNvg4WQ

「It's Not Me It's You」
Dom Howard/Tommy Evans作。シングルにもなりました。本作らしいアッパーなダンサブル・チューン。クラブジャズ/クロスオーヴァー好きの人も気に入るトラックなのでは?Ruby Woodのヴォーカルを割り切って素材として用いるのが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=FyjriQHT8Ew

「Fallen」
Chris Hargreaves/Heather McClelland/Ruby Wood/Taz Modi/Tommy Evans作。これぞ僕の好きなSubmotion Orchestraといった感じのビューティフル・トラック。聴いているだけで感動が胸に込み上げてきます。
https://www.youtube.com/watch?v=u57h8_e1Nvk

「Thousand Yard Stare」
Chris Hargreaves/Danny Templeman/Matthew Halsall/Simon Beddoe/Taz Modi作。地を這うベースミュージックとアッパーなダンス・ミュージックのせめぎ合いのような感じが面白いですね。
https://www.youtube.com/watch?v=f3eL7EWvz9M

「Coming Up For Air」
Ruby Wood/Simon Beddoe/Taz Modi作。本編ラストは美しいストリングスを配したビューティフル・トラックで締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=kXUf0J0C_8c

「Out For Me」
国内盤ボーナス・トラック。Tommy Evans/Simon Beddoe/Taz Modi/Ruby Wood作。疾走する電脳モードのダンサブル・チューン。
https://www.youtube.com/watch?v=3pexOc8Pxb8

Submotion Orchestraの過去記事もご参照ください!

『Finest Hour』(2011年)
Finest Hour

『Alium』(2014年)
Alium [帯解説・ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC448)

『Colour Theory』(2016年)
Colour Theory

『Kites』(2018年)
カイツ
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2023年03月15日

Mamas Gun『Cheap Hotel』

ポップ感覚に磨きがかかった3rdアルバム☆Mamas Gun『Cheap Hotel』

発表年:2014年
ez的ジャンル:UKポップ・ソウル・バンド
気分は... :意味のある偶然!

新作からUKのソウル・バンドMamas Gunの3rdアルバム『Cheap Hotel(2014年)です。

シンガーソング・ライター、デザイナー、マルチ奏者、リード・シンガーAndy Plattsを中心に、2007年ロンドンで結成されたソウル・バンドMamas Gunの紹介は、デビュー・アルバム『Routes To Riches』(2009年)、『Cure The Jones』(2022年)に続き3回目となります。

最近のAndy Plattsは、Mamas Gun本隊よりもShawn Leeと組んだAOR的なサイド・プロジェクトYoung Gun Silver Foxでの活動も目立ちますが、本作『Cheap Hotel(2014年)は、Young Gun Silver Foxでの活動開始直前にリリースされた作品です。

本作におけるメンバーはAndy Platts以下、Cameron Dawson(b)、Dave Oliver(key)、Terry Lewis(g)、Jack Pollitt(ds)という5名。Cameron Dawsonが新たにベーシストとして加入しています。

プロデュースはAndy PlattsJulian Simmons

昨年リリースされた『Cure The Jones』(2022年)あたりと比べると、“Mamas Gunってこんなにポップだったっけ”と思うぐらいポップなサウンドが印象的な1枚です。

ディスコ/ファンク/ソウルな味わいをポップに昇華させたトラックがズラリと並びます

シングルになった「Red Cassette」「Cheap Hotel」「Hello Goodnight」あたりを聴けば、本作のポップ感覚を実感できると思います。

この時期のMamas Gunならではのポップ・ワールドをご堪能あれ!

全曲紹介しときやす。

「Red Cassette」
Andy Platts作。先行シングルにもなったポップ・ソウルなディスコ・チューンがオープニング。よりポップになった本作を印象づける1曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=VvjPMv6-res

「Cheap Hotel」
Andy Platts作。タイトル曲もシングルになりました。ポップで健全なPrinceといった雰囲気のダンサブルなポップ・ファンクです。
https://www.youtube.com/watch?v=MWUNfJkMUTY

「Burn and Fade」
Andy Platts/Jack Pollitt /Terry Lewis作。フォーキーなブルーアイド・ソウルといった雰囲気のトラック。ストリングスを効果的に配しています。
https://www.youtube.com/watch?v=znKQ8xWd5CA

「Hello Goodnight」
Andy Platts作。この曲もシングルになりました。Andy Plattsのポップ・センスを楽しめる1曲。僕の場合、聴いた瞬間にElectric Light Orchestra(E.L.O)を思い出しました。
https://www.youtube.com/watch?v=swo_gtjGaks

「Jessie」
Andy Platts/Jack Pollitt /Terry Lewis/Dave Oliver/Cameron Dawson作。ファンキーなギター・リフが印象的なMamas Gunならではのソウル・グルーヴ。

「Love Logic」
Andy Platts作。Andy Plattsのソウルフルなファルセット・ヴォーカルを満喫できるブルーアイド・ソウル。彼らのソウル愛が伝わってきます。

「Midas Touch」
Andy Platts作。サイケな雰囲気も取り入れたロック・チューン。このバンドなロックな側面を楽しむことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=UPaUOA3_jnU

「People on the Run」
Andy Platts作。少しユルい感じが心地よいブルーアイド・ソウル。程良くポップ・ロックとソウルの中間あたりを狙ったバランス感覚が絶妙です。

「On and On」
Andy Platts/Jack Pollitt /Terry Lewis作。ネオアコのような青臭い疾走感とポップ・ロック・フィーリングをうまく融合させた仕上がり。

「Music Is My Thing」
Andy Platts/Jack Pollitt /Terry Lewis作。ソウル愛を満ちたファンキーなディスコ・チューン。本作ならではのポップな開放感もあってかなりキャッチーです。

「Where I Belong」
Andy Platts/Jack Pollitt作。ファルセット・ヴォーカルを官能的に聴かせる四つ打ちのダンス・チューン。それでもバンドらしさも忘れていないのがいいですね。

「Siamese Jackson」
Andy Platts/Jack Pollitt /Terry Lewis/Dave Oliver/Cameron Dawson/Rex Horan作。スペイシー・シンセによる遊び心を散りばめたファンキー・チューン。リラックスしたいい雰囲気です。

「Joy Rides」
Andy Platts作。ラストはパーカッシヴなダンサブル・チューンで締め括ってくれます。荘厳なストリングスが重厚な音世界を演出します。
https://www.youtube.com/watch?v=XLkTS4YwYJI

Mamas Gunの他作品もチェックを!

『Routes To Riches』(2009年)
ルーツ・トゥ・リッチーズ

『The Life And Soul』(2011年)
ザ・ライフ・アンド・ソウル

『Aversions』(2012年)


『Golden Days』(2018年)


『Cure The Jones』(2022年)
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2023年02月15日

Laneous『Monstera Deliciosa』

Hiatus Kaiyoteメンバーも参加☆Laneous『Monstera Deliciosa』

発表年:2019年
ez的ジャンル:オージー産ハイブリッド・ソウル
気分は... :モダン・ロマンス・・・

今回はオーストラリア人アーティストによるハイブリッド・ソウルLaneous『Monstera Deliciosa』(2019年)です・

Laneous(本名:Lachlan Mitchell)は、オーストラリア出身のシンガー、ギタリスト、プロデューサー。ビジュアル・アーティストとしても活動しているようです。

アフロ・ビートなどを取り込んだミクスチャー・バンドKafkaのメンバーとして活動した後、自らのグループLaneous & The Family Yahを率いて、『Laneous & The Family Yah』(2009年)、『Found Things』(2010年)という2枚のアルバムをリリースしています。

この頃、今やオーストラリアを代表するフューチャリスティック・ハイブリッド・バンドとなったHiatus Kaiyoteと交流を持つようになり、彼らの1stアルバム『Tawk Tomahawk』(2013年)、2ndアルバム『Choose Your Weapon』(2015年)のジャケの印象的なイラストはLaneousが手掛けたものです。

『Tawk Tomahawk』(2013年)
Tawk Tomahawk

『Choose Your Weapon』(2015年)
Choose Your Weapon

その後、Vulture St Tape GangJazz Partyといったユニットへの参加を経てリリースされたのが、Laneous名義での初ソロ・アルバムとなる本作『Monstera Deliciosa』です。

プロデュースはHiatus KaiyotePaul Bender

レコーディングの中心メンバーは、Laneous(vo、g、key、per、fl)以下、
Paul Bender(b、key)、Simon Mavin (key、back vo)というHiatus Kaiyoteのメンバー2人、The Cactus ChannelHudson Whitlock(ds、per、back vo)、Donny Stewart(vibes、flh、tp、tb、horns、back vo)という5名。

ブルーアイド・ソウルな魅力もある少しダークトーンのネオソウル「Terms」Lenny Kravitzの影響を感じる「Hard For You」、ハイブリッド感覚のグルーヴィー・ソウル「I Wanna Be Your Girl」、ローファイ感覚のメロウ・チューン「Not Quite Right」、哀愁モードのソウル・チューン「Hold My Hand」、先行シングルにもなったメロウ・ソウルなタイトル曲「Modern Romance」など多彩なトラックが並びます。

派手さがあるわけではありませんが、Laneousの美学が貫かれた不思議な魅力を持った1枚です。

全曲紹介しときやす。

「Introduction/Overture」
LaneousとPaul Benderの共作。少しレトロで幻想的かつ官能的なオープニング。

「Terms」
少しダークトーンのネオソウル。Laneousのソウルフルな持ち味を満喫できます。ブルーアイド・ソウルな魅力もあります。終盤にはElle Shimadaによる日本語の官能的なスポークン・ワードも聞こえてきます。

「My Song」
ポップ職人的な1曲ですが、ロックなエッセンスもあります。このあたりはミクスチャー系バンド出身らしいかもしれませんね。

「Hard For You」
このトラックはロック色が前面に出ています。ライナーノーツにも書いてある通り、John LennonLenny Kravitzの影響を感じます。

「I Wanna Be Your Girl」
ハイブリッド感覚のグルーヴィー・ソウル。幻想的な浮遊感が魅力です。このあたりの巧みなクロスオーヴァー感覚はオーストラリアのミュージシャンらしいですね。

「Not Quite Right」
リズムボックスとボッサ・ギターによるローファイ感覚のメロウ・チューン。ボッサ好きの僕には心地よい箸休めといった感じです。

「Waves Of Nightingales」
インタールード的な小曲。サイケな雰囲気が漂います。

「Hold My Hand」
哀愁モードのソウル・チューン。Mayer Hawthorne的な白人によるヴィンテージ・ソウルに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=EoeohsXkpns

「Trouble In Paradise」
LaneousとPaul Benderの共作。再びサイケなインタールード的小曲。

「Modern Romance」
先行シングルにもなった曲。タイトルの通り、ロマンティックなメロウ・ソウルで楽しませてくれます。さり気ないけどセンスを感じる僕好みの1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=plmuJmWHtyA

「Outroduction/Underture」
ラストは幻想的かつレトロな雰囲気を醸し出すアウトロで余韻に浸りながらアルバムは幕を閉じます。

ご興味がある方は、KafkaLaneous & The Family Yahの作品もチェックを!

Kafka『Kafka』(2008年)


Laneous & The Family Yah『Laneous & The Family Yah』(2009年)


Laneous & The Family Yah『Found Things』(2010年)
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2023年01月03日

Cassandra Wilson『Coming Forth By Day』

Billie Holidayへのトリビュート☆Cassandra Wilson『Coming Forth By Day』

発表年:2015年
ez的ジャンル:ブルージー女性ジャズ・ヴォーカル
気分は... :2023年最初の1枚!

新年明けましておめでとうございます。
本年も自分の好きな音楽を自由に紹介していきたいと思います。

2023年最初の1枚は、現代最高峰の女性ジャズ・シンガーの一人、"プリンセス・オブ・ダークネス"ことCassandra Wilson『Coming Forth By Day』(2015年)です。

これまで当ブログで紹介したCassandra Wilsonは以下の10枚(発売年順)。

 『Point Of View』(1986年)
 『Days Aweigh』(1987年)
 『Jumpworld』(1990年)
 『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
 『New Moon Daughter』(1995年)
 Jacky Terrasson & Cassandra Wilson『Rendezvous』(1997年)
 『Traveling Miles』(1999年)
 『Belly Of The Sun』(2002年)
 『Glamoured』(2003年)
 『Another Country』(2012年)

本作『Coming Forth By Day』(2015年)は、生誕百周年を迎えた不世出の女性ジャズ・シンガーBillie Holidayへのトリビュート・アルバムです。オリジナルの「Last Song (For Lester)」以外は、すべてBillie Holidayのレパートリーです。

2015年は本作以外にもBillie Holidayへのトリビュート・アルバムがリリースされました。当ブログでも紹介したJose James『Yesterday I Had The Blues』もそんな1枚です。

Jose James『Yesterday I Had The Blues』(2015年)
イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース

それでも“ジャズ・ヴォーカルの女王”へのトリビュートが一番似合うのはプリンセス・オブ・ダークネスですよね。

そんな本作『Coming Forth By Day』は、『Traveling Miles』(1999年)以来のUSジャズ・アルバム・チャート第1位となりました。

プロデュースはNick Launay。さらにEd Gerrardが共同プロデューサーとしてクレジットされています。

Van Dyke Parksがストリングス・アレンジを手掛けています。

Cassandra Wilson(vo、g)以下、Kevin Breit(g、banjo)、Jon Cowherd(p、org)、Nick Cave and the Bad SeedsMartyn P. Casey(b)とThomas Wydler(ds、per)、Robby Marshall(woodwinds、melodica)、Ming Vauze(guitar string)、T Bone Burnett(baritone guitar)、Yeah Yeah YeahsNick Zinner(g)、Eric Gorfain(violin)等がレコーディングに参加しています。

「Good Morning Heartache」「Strange Fruit」「Don't Explain」「Billie's Blues」「Crazy He Calls Me」あたりはプリンセス・オブ・ダークネスらしさを存分に楽しめます。

ロマンティックな「The Way You Look Tonight」「What a Little Moonlight Can Do」、他のトラックとサウンドの質感が異なる「You Go to My Head」、さり気ない「These Foolish Things」あたりもオススメです。

“ジャズ・ヴォーカルの女王”Billie Holidayと"プリンセス・オブ・ダークネス"ことCassandra Wilsonがリンクするブルージーな女性ジャズ・ヴォーカル・ワールドを満喫しましょう。

全曲紹介しときやす。

「Don't Explain」
Arthur Herzog, Jr./Billie Holiday作。このオープニングを聴けば、CassandraがBillie Holidayの後継者に相応しいシンガーであることを実感できます。♪言い訳はしないで、帰ってきてくれてうれしいわ♪と歌う切ないラブソング。Cassandraの抑えたトーンの低音ヴォーカルが切なさを助長します。
https://www.youtube.com/watch?v=trksiwm9bvY

「Billie's Blues」
Billie Holiday作。プリンセス・オブ・ダークネスらしいブルージーなダーク感がたまわない1曲。土臭さと呪術的なミステリアス感の混ざり具合がいいですね。
https://www.youtube.com/watch?v=PB1HK-rlVig

「Crazy He Calls Me」
Carl Sigman/Sidney Keith Russell作。しっとりとした中の気怠さが絶妙なブルージー・バラード。この味わいはCassandraに出せないものかもしれませんね。ストリングスによる演出も効果的です。
https://www.youtube.com/watch?v=o0S5NDXdDhE

「You Go to My Head」
Haven Gillespie/J. Fred Coots作。それまでの3曲とサウンドの質感が異なるのが印象的です。オーセンティックさとコンテンポラリー感を併せ持つモダンなサウンドをバックに、Cassandraが優しく歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=ayBMyOe-rdE

「All of Me」
Gerald Marks/Seymour Simons作のスタンダード。プリンセス・オブ・ダークネスらしく哀愁ムードたっぷりで歌い上げます。地を這うような低音ヴォーカルが哀愁モードによくフィットします。
https://www.youtube.com/watch?v=PsPT7KZrNYo

「The Way You Look Tonight」
Dorothy Fields/Jerome Kern作。個人的にはアルバムで一番のお気に入り。アルバムで最もロマンティックなラブ・バラードに仕上がっています。優しさに包まれたCassandraの低音ヴォーカルも悪くありませんよ。
https://www.youtube.com/watch?v=yBcijYD7778

「Good Morning Heartache」
Dan Fisher/Ervin Drake/Irene Higginbotham作。前述のJose James『Yesterday I Had The Blues』でもオープニングを飾った曲であるため、僕の中でBillie Holidayの歌というイメージが強い曲です。そのJose Jamesヴァージョンもインパクトがありましたが、情熱的なCassandraヴァージョンも迫力満点です。
https://www.youtube.com/watch?v=-gbZiBQZ1zU

Cassandraヴァージョンとは対照的なJose Jamesヴァージョンとの聴き比べも楽しいのでは?
Jose James「Good Morning Heartache」
 https://www.youtube.com/watch?v=14MykpfXuXg

当ブログではJose Jamesの他にJill Scottのカヴァーも紹介済みです。

「What a Little Moonlight Can Do」
Harry M. Woods作。当ブログではJose Jamesのカヴァーも紹介済みです。「The Way You Look Tonight」と並ぶ僕のお気に入り。ロマンティックなラブ・バラードを抜群の表現力で優しく歌い上げます。美しいストリングス・アレンジもグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=ExLPqNTgo8k

「These Foolish Things」
Eric Maschwitz/Jack Strachey作。さり気なさが魅力のビューティフル・バラード。オーセンティックな雰囲気ですが、逆にCassandraの貫禄を感じます。
https://www.youtube.com/watch?v=P892Yw0jc9Y

「Strange Fruit」
邦題「奇妙な果実」。Billieの代表的なレパートリーとしてお馴染みですね。1939年、Lewis Allanによって書かれた当時のアメリカ南部の人種差別による黒人リンチの光景を描いた歌です。Cassandraは『New Moon Daughter』(1995年)でも本曲をカヴァーしています。当ブログではJose Jamesのカヴァーも紹介済みです。これはもうCassandraにハマりすぎの楽曲ですよね。まさにプリンセス・オブ・ダークネスの本領発揮の1曲に仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=YyNtFAMMsuA

「I'll Be Seeing You」
Irving Kahal/Sammy Fain作。当ブログではMark Murphyのカヴァーも紹介済みです。美しくもミステリアスなバッキングが印象的なバラードをCassandraがしっとり歌い上げます。
https://www.youtube.com/watch?v=x3RZ1pYLxdI

「Last Song (For Lester)」
Cassandra Wilson/Jon Cowherd/Kevin Breit/Martyn Casey/Robby Marshall/Thomas Wydler作。唯一のオリジナル曲。Billie Holidayの盟友であった偉大なジャズ・ミュージシャンLester Youngの葬儀で彼女が歌おうとして遺族から断られたエピソードに基づき書かれた曲。プリンセス・オブ・ダークネスらしいブルージーな雰囲気で締め括ってくれます。
https://www.youtube.com/watch?v=aKPPWkEU6GY

Cassandra Wilsonの過去記事もご参照下さい。

『Point Of View』(1986年)
ポイント・オブ・ヴュー

『Days Aweigh』(1987年)
デイズ・アウェイ

『Jumpworld』(1990年)
ジャンプワ−ルド(JUMPWORLD) (MEG-CD)

『Blue Light 'Til Dawn』(1993年)
Blue Light 'Til Dawn

『New Moon Daughter』(1995年)


Jacky Terrasson & Cassandra Wilson『Rendezvous』(1997年)


『Traveling Miles』(1999年)
トラヴェリング・マイルス

『Belly Of The Sun』(2002年)
Belly of the Sun

『Glamoured』(2003年)
Glamoured by Wilson, Cassandra 【並行輸入品】

『Another Country』(2012年)
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2022年12月07日

Swindle『No More Normal』

UKクラブミュージックとUK新世代ジャズのクロスオーヴァー☆Swindle『No More Normal』

発表年:2018年
ez的ジャンル:UKグライム×ジャズ×ソウル/ファンク
気分は... :PK戦は運か実力か?

UKクラブミュージックとUK新世代ジャズのクロスオーヴァー、Swindle『No More Normal』(2018年)です。

Swindle(本名:Cameron Palmer)は、1987年ロンドン生まれのプロデューサー/キーボード奏者/トークボクサー。

UKグライム・シーンから登場し、様々なアーティストとのコラボレーションによるジャズ、Hip-Hop、ソウル/ファンクも取り込んだクロスオーヴァーな音楽性で人気を博しています。

これまで『Curriculum Vitae』(2009年)、『Long Live the Jazz』(2013年)、『Peace, Love & Music』(2015年)、『No More Normal』(2018年)、『The New World』(2021年)といったアルバムをリリースしています。

前からSwindleを取り上げようと思っていたのですが、これまで機を逃してきました。しかし、少し前に紹介した『Blue Note Re:imagined II』(2022年)でSwindleがフィーチャリングされていたことで「今度こそは」と思い、ようやくエントリーできました。

Gilles PetersonBrownswood Recordingsからのリリースとなる4thアルバム『No More Normal』は、Nubya Garcia(sax)、Yussef Dayes(ds)といったUK新世代ジャズ・ミュージシャンや、D Double EP Money等のUKグライム・シーンのラッパーの参加が目を引きます。

これまで以上に生演奏を重視しており、そのせいかR&B/ソウル・マインドが高くなっている印象を受けます。その意味では、他のSwindle作品よりもかなり聴きやすいと思います。

僕のSwindleに対するイメージを大きく変えてくれた1枚。
トークボックス多めな点も含めて僕好みの1枚に仕上がっています。

全曲紹介しときやす。

「What We Do」
D Double E、Daley、P Money、Rider Shafiqueをフィーチャー。美しいストリングスをバックにしたRider Shafiqueのスピーチと共に始まる前半と、D Double E、Daley、P Moneyをフィーチャーしたグライムな後半という二部構成のオープニング。
https://www.youtube.com/watch?v=4WC3L8ZbiUs

「Get Paid」
Swindleのトークボックスを楽しめる小曲。短いながらも、ソウル/ファンク、Hip-Hop、ジャズのクロスオーヴァーを楽しめます。

「Drill Work」
Ghettsをフィーチャー。不穏なムードのグライム・チューンながらも、ドラマティックなストリングス&ホーンを織り交ぜているあたりがSwindleらしいのかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=iYumtTB2zIw

「Run Up」
Eva Lazarus、Kiko Bun、Knucks、Nubya GarciaをフィーチャーまるでD'Angeloを思わせるような雰囲気のR&B/ソウルトラックに仕上がっています。
そこにラップやNubya Garciaのムーディーなサックスが絡む、ソウルフルなSwindleワールドを楽しめます。

「Coming Home」
UK新世代ジャズ作品にも数多く参加するUKラッパーKojey Radicalをフィーチャー。ここではよりソウルフルなトラックをバックに、情感のあるフロウを聴かせてくれます。雰囲気のあるホーン隊もグッド!
https://www.youtube.com/watch?v=VKiiECYQsWA

「Reach The Stars」
ガーナ系のUKソウル・シンガーAndrew Ashongをフィーチャー。ここではヴォーカルのみならず、ギター、ベースもプレイしています。そこにSwindleのトークボックスが絡むネオソウル・チューンに仕上がっています。
https://www.youtube.com/watch?v=Pr2b7FvF1dQ

「Knowledge」
Eva Lazarus、Kiko Bunをフィーチャー。ブリストル出身の女性シンガーEva Lazarusのラップ交じりのヴォーカルが印象的なHip-Hopトラック。
https://www.youtube.com/watch?v=x38lm6EIQ30

「Take It Back」
D Double Eをフィーチャー。哀愁モードのグライム・チューン。Swindleのトークボックスやストリングスでよりソウルフルな質感となっています。
https://www.youtube.com/watch?v=swzm25pEUt0

「California」
Etta Bond、Kojey Radicalをフィーチャー。生演奏重視の本作らしいグルーヴ感が印象的なトラック。この少しレイジーな雰囲気がカリフォルニアっぽいのかな?
https://www.youtube.com/watch?v=X0MJIFjR-f8

「Talk A Lot」
Eva Lazarusをフィーチャー。Yussef Dayes(ds)も参加しています。開放的なカリビアン・テイストも織り交ぜたグルーヴィーな仕上がり。新たなSwindleワールドで楽しませてくれます。

「Grateful」
Kojey Radical、Rider Shafiqueをフィーチャー。本編ラストは大きな愛を感じるビューティフル・トラックで締め括ってくれます。

「Dejà vu」
国内盤ボーナス・トラック。Swindle流ディスコ・ファンク。本編と異なる弾けたパーティー・モードで楽しませてくれます。

Swindleの他作品もチェックを!

『Curriculum Vitae』(2009年)


『Long Live the Jazz』(2013年)


『Peace, Love & Music』(2015年)


『The New World』(2021年) ※アナログ盤
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